ここ数年、多くの自動車メーカーがこぞって力を入れている分野が、ドライバーが運転していなくても操縦してくれる『自動運転』です。
すでに市販化され普及しつつあるこの自動運転技術ですが、具体的にどんな機能があるのかメリットやデメリットなどご紹介します。
目次
車の『自動運転技術』とは?
自動運転と聞くと、「車が全て勝手に運転してくれるもの」と考える人も多いかもしれませんが、2017年時点では100%自動で運転するものではなく、「運転を助けて(サポート・アシスト)くれる機能」を指します。
具体的にどんなことを助けてくれるのかというと、
- ドライバーがアクセルを踏まなくても設定した速度を保って走行する『クルーズコントロール』
- 一般道路や高速道路を走行中レーンからはみ出さないようステアリング操作をアシストする『レーンキーピングアシスト』
- 渋滞時に自動でアクセルやブレーキを制御し、前の車との衝突も防いでくれる『渋滞時追従支援システム』
- 前を走っている車との車間距離を自動で保ってくれる
- 前の車と距離が縮まり過ぎたら、自動でブレーキをかけてくれる『衝突被害軽減ブレーキ』
といった、ドライバーのミスをアシストしてくれる機能としての『自動運転』が一般的。
この自動運転技術には操縦サポートの段階によってそれぞれレベル分けがされています。
自動運転技術にも『レベル』がある
自動運転にはそれぞれ段階的なレベルが設定されています。
日本の場合、アメリカのSAEインターナショナルが定めた「SAE J3016」が使われており、情報提供やドライバー責任の有無によってレベル0~5まで定義されています。(2017年7月現在)
レベル0〜5による自動運転の定義
自動運転の定義 | |
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レベル0(非自動運転) | 自動運転の機能を搭載していない車。完全に人間が運転する。 |
レベル1(ドライバー支援) | 自動ブレーキなど、運転を助けるシステムが搭載された車。 |
レベル2(部分的自動運転) | 限定的な範囲で自動運転が可能な車。 |
レベル3(条件付自動運転) | 緊急事態を除き、条件付きで自動運転が可能な車。 |
レベル4(高度自動運転) | 原則、ドライバーの対応を必要としない車。限定的な範囲で自動運転を完遂できる。 |
レベル5(完全自動運転) | ドライバーの対応をまったく必要としない車。範囲を限定せず自動運転を完遂できる。 |
レベル0~2まではドライバーの運転が主体となり、自動運転はあくまでも運転を支援するための目的で搭載されます。レベル3~5になると、運転の主体は自動運転になり、ドライバーはシステムの監視をするだけで済む状態です。
主な自動運転は「自律型」と「協調型」の2タイプ
自動運転には、車に搭載したシステムだけで機能する「自律型」と、外部と通信を行いながらより広範囲に安全を確保して走る「協調型」があります。
「自律型」は、カメラやレーダーなどの車載センサーのみを使って自動運転が可能になるため、コストを抑えられることがメリットです。走行中のステアリングアシストや衝突軽減ブレーキなどが主な機能であり、最近では普通車だけでなく軽自動車にも搭載されたものが登場してきました。
一方、「協調型」は高速道路に設置されているETCやGPSなどを使い、大量のデータを車載システムとやり取りすることで走行中の予測機能をより強化したものです。急カーブや歩行者の存在などをいち早くドライバーに知らせ、より安全な自動運転が実現できます。
ですが、「協調型」の自動運転を可能にするためには車だけでなく外部のシステムも一緒に整備することが必要になり、コストの面で普及が難しいのが現実です。
自動運転にはこの「自律型」と「協調型」それぞれのシステムを両立させることが重要ですが、今後はさらに技術の発展が期待されます。
自動運転が進むことによるメリット・デメリット
自動運転のメリット
- 交通事故の減少: ドライバーによるスピードの出し過ぎや車間距離の詰め過ぎ、脇見運転などの危険が減ることで交通事故を回避できる。
- 渋滞の回避: 自動運転によって車の流れがスムーズになり高速道路などの渋滞が減る。
- 運転手が不要: 老人や子ども、障害者や無免許の人間でも乗車が可能になり移動手段を確保できる。
- 駐車場不足の緩和: 無人で走行できるので遠い場所でも駐車場を確保できる。また、必要なときにスマートフォンなどで呼ぶことができる。
- カーシェアリングなどによる応用: 1台の自動車でより多くの人間を移動させ効率よく運搬することができる。
自動運転化による最大のメリットは、人間の操作ミスによる事故を減らすことで人間の命を守れることです。
他にも自分で運転が難しい老人や障害者など車での移動が必要な人にとっても大きな助けになり、長距離トラックなど人間では負担となる運転も自動運転ならその心配がなく、人件費の削減にもつながることに。
さらに、完全自動運転となればハンドルやペダルなど操作系を取り付ける必要もなくなり、より広く快適な室内空間を確保できる『安全な移動手段としての自動車』として期待が出来ます。
自動運転のデメリット
- 事故の責任問題: ドライバーの過失なのかシステムの異常に起因するものか判断が難しいのが現状。
- ドライバーが必要な際の経験不足: 人間によるマニュアル運転が必要になったときに対応できない可能性。
- 搭載システムへのハッキング: 車間通信などで搭載システムに不正アクセスされ、データを盗まれる恐れがある。
- システムが天候に左右される: 雨や雷など悪天候のときにシステムが正常に道路状況を判断できない可能性。
- テロなどへの悪用: 無人運転が可能になると、爆発物を積んだ自動車がテロなどに使われる可能性。
自動運転化のデメリットは、まず万が一事故が起こったときに責任の所在が人間とシステムのどちらにあるか判断が難しい点にあります。
完全自動運転となっても、人間はハンドルを握る代わりにシステムの「監視」が必要になり賠償責任の有無をどう決めるかは議論を呼ぶことが予想されます。また、緊急時にマニュアル運転が必要となったときのドライバーの経験不足など、運転できない人間が乗車している場合の事故なども懸念されています。
無人で走行できる自動車がテロや戦争で人の命を奪う凶器になることも予測され、完全自動運転化にはまだまだ多くの乗り越えるべき壁がある状態です。
現在販売されている自動運転が可能な車種
日産 セレナ(自動運転レベル2)
ミニバンクラスでは世界初となるレベル2の自動運転機能を備えた「プロパイロット」を搭載している日産の「セレナ」。
高速道路の走行中、モニターが白線を確認しながらレーンの真ん中をキープする、また前を走る車をモニターして車間距離が縮まれば自動でブレーキをかけ、安全な走行を続けます。アクセルやブレーキ、ステアリングを自動でコントロールしてくれるので、渋滞でもイライラせず過ごせます。ハンドルにあるボタンを押すだけの簡単な操作でセットできる手軽さも魅力です。
スバル レヴォーグ(自動運転レベル2)
「ぶつからない技術」「ついていく技術」など5つの機能を持つ「アイサイト ver.3」を搭載したスバルの「レヴォーグ」。
高速道路などでステアリング操作をアシストする「アクティブレーンキープ」は、車線の真ん中を走行することや車線をはみ出すことを抑制する機能で長時間でも安心して運転できます。また、アクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐ「AT誤発進抑制制御/AT誤後進抑制制御」機能は、後進への対応も可能。警報音と警告表示でドライバーに注意を促します。
ホンダ フィット(自動運転レベル2)
ハイブリッド・ガソリンの両方のラインナップで幅広い世代から支持を得ているホンダの「フィット」。こちらは「Honda SENSING」という安全運転支援システムを搭載しています。
レーンキープ走行、安全な車間距離を維持するステアリング支援はもちろんのこと、前の車が発進すると教えてくれたり、歩行者との衝突を回避する機能など、国産車の中でも細かいサポート・アシストがあるのが特徴です。こちらも誤発進抑制機能があり、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故を防ぎます。
マツダ CX-3(自動運転レベル2)
「i-ACTIVSENSE」という先進安全技術を搭載したマツダの「CX-3」は、自動ブレーキに留まらない自動運転でドライバーをサポートしてくれます。
「ブラインド・スポット・モニタリング」は車線変更時に死角になっていたほかの車をセンサーが検知、警告。「リア・クロス・トラフィック・アラート」は駐車場からバックで出る際など、近くにいる車を検知して警告してくれるほか、「ドライバー・アテンション・アラート」はドライバーの状態を学習して最適なタイミングで休憩を促すなど、安全な運転のためのサポートが充実しています。
テスラModel S(自動運転レベル2)
完全電気自動車を販売しているテスラ。これまでも他のメーカーに先駆けて自動運転機能を搭載した車を販売してきましたが、「Model S」は将来の完全自動運転に向けた「オートパイロット」というハードウェアが搭載されています。
高速道路では、レーンの真ん中をモニターしながら前の車との車間距離を保って走行するだけでなく、車線変更も自動で行ってくれるほか目的のインターチェンジに着くとそのまま降りてくれるなど、ドライバーの負担を減らすさまざまな機能があります。
「オートパイロット」は、スマホのアプリのように常にアップデートを行い、最新の情報を取得します。技術の進歩がすぐに反映されるのも優れた点ですね。
メルセデス・ベンツ Eクラス セダン(自動運転レベル2)
ベンツがEクラスに搭載している「ドライブパイロット」は、ドライバーを支援する機能が満載。
走行中はレーンの真ん中をキープして走るのはもちろんのこと、車線変更も自動で行ってくれ、歩行者の飛び出しを察知すると正確なステアリングで衝突を回避、制限速度の標識を自動で読み取ってそれ以上のスピードが出ると警告音で知らせるなど、事故のない安全な運転のためのサポートはほかのメーカーよりずっと豊富です。
また、ドライバーが一定以上の時間ハンドルから手を離した状態になると、自動で車を左側に寄せて停止し、ハザードランプを点ける機能もあり、万が一のときまでドライバーの安全を考えているのが「ドライブパイロット」です。
BMW 5シリーズ ツーリング(自動運転レベル2)
BMWの中でもスポーティな走りが人気の「5シリーズ ツーリング」。こちらは「ドライビング・アシスト・プラス」という名称の自動運転機能を搭載し、全車に「衝突回避・被害軽減ブレーキ」を標準装備しています。
「レーンチェンジアシスト」は高速道路を走行中のスムーズで安全な車線変更をサポート。「ストップ&ゴー機能」付きのアクティブ・クルーズ・コントロールは、車間距離や速度を常にチェックし、道路が空けば加速、急ブレーキをかけた際は警告と自動でブレーキを作動する機能もあります。
「アクティブ・プロテクション」は危険な状態になったらシートベルトのたるみを引き締め、ウィンドウとルーフを自動で閉める、事故が発生したらブレーキをかけることで被害を軽減させることが可能です。
ボルボ S90(自動運転レベル2)
ボルボのラインナップの中でも最上級モデルとなるフラグシップセダン「S90」は、「インテリセーフ」という自動ブレーキをはじめたとした運転支援機能を搭載しています。
歩行者や自転車までしっかり検知して警告、自動でブレーキをかけるシティ・セーフティ技術は、交差点も安全に走行することができ、「レーン・キーピング・エイド」で車線からの逸脱を防止し、駐車を支援する「パーク・アシスト・パイロット」でスムーズな駐車をアシストします。
自動運転中はクラウドと接続して常に最新の交通状況を得ることができるなど、ドライバーの安全と事故の軽減を目指した機能が魅力です。
現状はレベル2がほとんど、レベル3以上はこれからに期待!
そのほか、アウディは来年発売予定のセダン「A8」にレベル3の自動運転機能を搭載すると発表しています。レベル3になると運転の主体はドライバーから自動運転になり、初めて「ハンドルから手を離した状態」での走行が実現することになりますが、中央分離帯のある高速道路という条件が付きます。
レベル3以上の自動運転を可能にするためには、機能の向上だけでなく道路交通法の改正など法制度の整備も課題です。これからの国の対応にも注目ですね。
まとめ:完全自動運転化の実用化は2020年以降
日本では、「未来投資戦略2017」において「2020 年頃に完全自動走行を含む高度な自動走行(レベル3以上)の市場化・サービス化に向け、制度整備の議論を加速し、本年度中に、政府全体の制度整備の方針(大綱)を取りまとめる」としています。
2020年に開催される東京オリンピックに向け、自動運転可能なタクシーの走行などが期待されており、今後は国をあげて自動運転システムの整備に力を入れていく姿勢です。
そして日本だけでなく、アメリカやドイツなど多くの国で開発が進む自動車の自動運転。現在の日本ではレベル2が主流ですが、将来的にはレベル5の完全自動運転を実現させることを国も目的としています。
自動運転機能を搭載した車は今後も間違いなく増えていきます。
中古車市場でも自動運転技術の付いた車種も選択肢に入ってくるので、今から選べる自動運転技術を知っておくとより良い車選びに役立つのは間違いありません。
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